新生児ざ瘡(あかちゃんニキビ)
新生児ざ瘡、一般的には「あかちゃんニキビ」と呼ばれるものです。これは、お母さんから赤ちゃんへ移行したホルモンが影響を及ぼし、赤ちゃんの皮脂分泌が盛んになるために起こるものです。
その結果、ニキビができることがあります。
赤ちゃんの肌はとてもデリケートなので、適切なスキンケアがとても大切になります。
以下に、肌のケアのポイントをいくつかご紹介します。
これらのスキンケアを行うことで、あかちゃんの肌を健康に保つことができます。
- 毎日1回、泡立てた石鹸(または泡状の石鹸)で汚れを落とします。お湯だけでは、しっかりとした洗浄は難しいです。
- 泡立てた石鹸を手に取り、赤ちゃんの肌を包むように優しく洗います。ガーゼなどは、肌に刺激を与える可能性があるため使わないようにしましょう。
- 石鹸やシャンプーは、しっかりとすすぎます。残った洗剤が肌トラブルを引き起こすこともあります。
- お湯の温度は、赤ちゃんの肌に優しいぬるめの38℃前後にします。
- 洗い終わったら、タオルで押さえるようにして水分を拭き取り、保湿剤をたっぷりと塗ります。適量の目安は、肌が少しテカる程度で、ティッシュが1枚くっつくくらいです。
おむつかぶれ
赤ちゃんのお肌は大人に比べてとてもデリケートであり、おむつ内で湿った状態が続いたり、おしっこやうんちの成分が刺激となると、かぶれることがあります。
おむつが汚れたままにならないように頻繁に交換すること、お尻を清潔に保つことが重要です。
特に胃腸炎の時などは、頻繁にうんちをするため、お尻がすぐに赤くなることがあります。悪化すると、皮膚がただれて(びらん)、痛みや痒みを伴ったり、出血することもあります。
ワセリンや亜鉛華単軟膏などを使って皮膚をコーティングし、うんちが直接肌に触れないようにすると良いでしょう。炎症が強い場合は、ステロイド軟膏を使用することもあります。
カンジダ皮膚炎
おむつの中は高温多湿で、カビの一種であるカンジダが繁殖しやすい環境で、ブツブツの原因になることがあります。
おむつかぶれとカンジダ皮膚炎を区別するポイントとしては、しわとしわの間など、尿や便が直接触れていない部分にまで炎症が見られる場合はカンジダの可能性があります。
おむつかぶれにカンジダ皮膚炎が合併していることもありますが、なかなか治らないときにはもう一度受診をするようにしましょう。カンジダ皮膚炎には抗真菌薬軟膏(カビ用)が必要になります。
乾燥肌(皮脂欠乏症)
子どもは大人に比べて皮脂腺の発達や皮膚の水分保持機能が未熟なため、乾燥肌になりやすいとされています。
そのため、子どもの皮膚は水分が蒸発しやすく、乾燥しやすい状態となっています。
乾燥肌を防ぐために大切なのは、保湿ケアです。お風呂上がりには、特にしっかりと保湿をしてあげましょう。
そして、乾燥が気になるときには、その都度保湿ケアを行うことが大切です。冬など乾燥する季節には、1日に数回保湿ケアを行うことが必要になることもあります。
また、健康なお肌は、アレルギーや細菌、ウイルスから体を守る「バリア機能」を持っています。でも、乾燥しているとこのバリア機能が低下してしまいます。すると、アレルギーや細菌、ウイルスが体内に侵入しやすくなり、湿疹やアトピー性皮膚炎が起こりやすくなります。また、とびひや水いぼなどの皮膚のトラブルも起こりやすくなってしまいます。そのため、子どものお肌ケアではしっかりとした保湿がとても重要になります。
接触性皮膚炎
子どものお肌はとても敏感で、特定のものに触れると反応してしまうことがあります。これを「接触性皮膚炎」と呼びます。具体的には、特定の物質を触った後にお肌に湿疹が出てくることを指します。
接触性皮膚炎は、大人だけでなく、小さな子どもたちにもよく見られます。原因は2つあります。一つは、アレルギー反応が原因の「アレルギー性接触皮膚炎」、もう一つは、刺激が原因の「刺激性接触皮膚炎」です。
アレルギー性接触皮膚炎は、漆やゴム、金属など特定の物質に皮膚が触れたときに起こります。この物質に対するアレルギーが成立してしまうと、再び同じ物質に触れたときに、数時間~1日後に湿疹が出てきます。
一方、刺激性接触皮膚炎は、皮膚自体が直接傷つけられることが原因です。化学物質やせっけん、体液などがその原因になりやすく、赤ちゃんがよくかかる「おむつかぶれ」や「よだれかぶれ」も、この刺激性接触皮膚炎の一種です。
接触性皮膚炎が出たら、まずはその部分を清潔に洗ってあげましょう。それから、お肌を保護するために軟膏を塗ります。症状がひどい場合は、ステロイドの塗り薬を使うこともあります。
とびひ(伝染性膿痂疹)
「とびひ」とは、虫刺されや擦り傷、湿疹などの少し傷ついた皮膚に細菌が入ってしまうことで起こる病気です。強くかゆい水ぶくれができ、それが破れて液が出ます。その液が肌につくと、別のところにも同じような症状が出ることがあります。これが「とびひ」、つまり火の粉が飛び火するように広がるからこの名前がついたんです。
以前は主に夏場に見られましたが、今は一年中、この「とびひ」になることがあります。特に小さなお子さんたちに多く、保育園や幼稚園、学校などの集団生活でうつることが多いので注意が必要です。
「とびひ」の治療は症状の程度によります。軽い場合は、薬を塗って治します。でも、広い範囲に広がったり、アトピー性皮膚炎などもある場合は、ステロイドの外用薬と抗ヒスタミン薬といったかゆみ止め薬を併用することがあります。
大事なことは、お子さんの皮膚を清潔に保ち、できるだけ病気の部分をいじらないことです。もし「とびひ」の部分をガーゼなどで覆えるなら、学校や保育園にも行けます。ただし、水ぶくれが完全に乾くまではプールは避けてください。
蕁麻疹
蕁麻疹(じんましん)は、蚊に刺されたみたいに皮膚がポコッと膨らんで、かゆみが出ることがよくあります。その場所や形、大きさはいろいろで、突然出現して数時間後には消えることもあります。また、出たり消えたりを繰り返すことも特徴です。
蕁麻疹は、何か特定のものにアレルギー反応を起こして出ることもありますが、何が原因で出るのかわからないことも多いです。体が蕁麻疹を出しやすい体質で、風邪や疲れなどがきっかけで出ることもあります。大人の場合、ストレスとなることもあります。子どもたちは、風邪をひいたときなどに蕁麻疹が出ることがよくあり、風邪が治れば自然と蕁麻疹も消えることが多いです。
蕁麻疹の治療は、主にかゆみを止める薬を飲む方法があります。塗り薬はあまり効果がないことが多いです。かゆみを和らげるためには冷やすと良いです。温めるとかゆみが悪化することがあります。ですので、蕁麻疹が出ているときにお風呂に入るときは、ぬるま湯で短めにするか、シャワーだけにした方が良いです。また、運動も体を温めるので、蕁麻疹が出ているときは控えると良いでしょう。
水いぼ
水いぼは、白くて丸く、少し光って見えるイボの一種です。見た目は気になるかもしれませんが、そのままにしておいても痛みやかゆみを引き起こすことはありません。原因は、ウイルスが皮膚に感染することです。特に、乾燥肌やアトピー性皮膚炎のお子さまは、皮膚に小さな傷や乾燥があるので、ウイルスが侵入しやすくなり、水いぼができやすい傾向があります。そのため、お子さまの皮膚を健康に保つことが予防にもつながります。
治療には様々な方法があります。まず、ハトムギの成分が含まれた薬を内服する方法がありますが、効果にばらつきがあります。また、ピンセットでつまんだり、液体窒素で焼いたりする方法もありますが、これらの治療は痛みを伴うことがあります。
さらに、水いぼを取り除いても再発することがあるため、一度治療が完了しても、しっかりとお手入れを続ける必要があります。
当院では水いぼクリーム(3A M-BF CREAM)の処方もしています。
銀イオン配合の保湿クリームで、殺菌効果の高い銀イオンと、強力な保湿成分でありかつ抗炎症作用も報告されているサクランが配合されており、ウイルスが原因である水いぼにも有効です。この治療法は水いぼが多くなり、摘除が難しい場合や、痛みを伴う処置が難しいお子さまに特に効果的です。
何よりも、この治療法は痛みを伴わないため、お子さんにとって負担が少ない治療です。
副作用は稀ながらかぶれ(接触性皮膚炎)がありますが、重篤な副作用はなく、非常に理想的な抗菌作用のある物質です。副作用が発生した場合は、使用を中止し、医師に相談してください。また、効果には個人差があり、必ずしも全ての患者さんに効果があるわけではありません。
有害事象の報告は352症例中6症例(1.7%)で、重篤な副作用の報告はありませんでした。内訳は接触皮膚炎が2例(0.5%)、塗布部のかゆみが4例(1.1%)のみです。
1日2回、朝と入浴後に使用します。水いぼの部分だけではなくその周りにも塗布します。クリームを塗布後最短2週間、通常2ヶ月前後で塗布した水いぼのところだけが赤くなってきます(それ以外の部分は何も変化がありません)。
それが効果出始めのサインです。その後、約1ヶ月で徐々に消失していきます。
銀イオン配合クリームの費用は保険適応外で、自費診療となります。クリーム1本あたりの価格は、税込みで2500円です。治療中でも、学校や幼稚園への登校、プールでの遊びに制限はありません。ただし、タオルや浮き輪などの共有は避け、プール後にはシャワーでしっかりと洗い流すことをお勧めします。
汗疹(あせも)
汗疹は、汗の出口が塞がってしまい、肌が赤く腫れてしまう症状です。これは特に胸や背中のような、汗がよく出る部分でよく見られます。汗疹はかゆみを引き起こすことが多いです。
汗疹の治療では、湿疹に対して使うような軟膏を塗ることがあります。しかし、その前にまずは入浴で汗や皮膚の汚れを落とすことが重要です。さらに、汗をかいたらその都度タオルで拭き取ったり、こまめに衣服を着替えることも大切です。
また、特に暑い季節や汗をたくさんかく時期には、風通しの良い涼しい場所を探すと良いです。エアコンを使って室内温度を調節することもおすすめです。夏場は25~28℃、冬場は18~22℃に保つことで、汗をあまりかかないような適度な温度にすることができます。これらの対策を取ることで、汗疹の発生を防ぐことができます。
しもやけ
寒い季節に手の指や足の指、耳たぶ、時に鼻の頭が赤くなり、少し腫れてかゆがるのが「しもやけ」で、正式名を「凍瘡(とうそう)」といいます。
このしもやけは、冷たい季節に体が寒さから自然に防御しようとする反応の一つなんです。寒くなると、体は血管を狭めて体の中心部へと血液を集め、体温を保つように動きます。しかし、これが皮膚の細い血管まで影響し、血流が悪くなってしまうことでしもやけが起こるのです。
意外なことに、真冬よりも初冬や春先に多く見られます。そして、一度しもやけになると、毎年同じ時期に同じ症状が出ることがあります。
しもやけになった時には、暖め、血行を良くすることが大切です。暖めながらビタミンEの軟膏を塗り、マッサージすると良いです。また、漢方薬も効果的です。体を温める作用のある「ショウガ」と、苦いですが「呉茱萸(ごしゅゆ)」が入った漢方薬がおすすめです。ただし、子供たちには飲むのが少し難しいかもしれません。
しもやけを予防するには、まずは手足が冷たくならないようにすることが大切です。部屋の温度を調整したり、手袋や靴下で暖めたりしましょう。入浴して体を温めることも有効ですが、浴後はしっかりと乾かすことを忘れないでください。寒さだけでなく、湿った状態もしもやけを引き起こす原因となります。また、足にぴったりと合った靴を履いたり、足首を締め付けない靴下を選ぶことも大切です。
にきび
「にきび」は、多くの方が一度は経験したことがあるでしょう。にきびは、皮脂の分泌が過多になり、そしてその皮脂が詰まって毛穴が閉じてしまうことから始まります。この状態は、アクネ菌が増えやすい環境を作り出します。アクネ菌が増えると、皮膚が赤く腫れ上がり、にきびや膿を持つにきびができることがあります。
治療には主に2つの薬が使われます。1つは毛穴の詰まりを取り除く薬、もう1つはアクネ菌に効果的な抗生物質です。赤く膿んだにきびには抗生物質が必要になることが多いですが、一番大切なことは毛穴の詰まりを取り除く薬を定期的に使い続けることです。毛穴が開いた状態を保つことで、皮脂が再び溜まり、新たなにきびができることを防ぐことができます。再発予防(維持療法)が、にきび治療の鍵となります。
日々の生活で気をつけていただきたいことは、ストレスをなるべく避け、規則正しい生活を心掛けることです。食事や化粧に関する特別な制限はありません。洗顔は1日2回、洗顔料を使って行ってください。乾燥が気になる場合は、保湿剤を併用すると良いです。
子どもの日焼け
「日焼け」とは、日光の紫外線が原因で起こります。
紫外線を過剰に浴びると、次のような問題が生じる可能性があります。
これらの理由から、赤ちゃんの頃から強い日焼けを避けることは、生涯にわたる健康を保つために大切なことです。
- 皮膚の老化が早まり、しわやしみが増える。
- 皮膚ガンを引き起こしやすくなる。
- 目の病気(白内障、翼状片、網膜のメラノーマというガンなど)のリスクが高まる。
日焼けを防ぐためのポイントをいくつか挙げます。なお、晴れた日ばかりではなく曇りの日でも注意をしましょう。
- 時間帯:紫外線が最も強い時間は午前10時から午後2時までです。
可能な限り、この 時間帯に長時間屋外で活動することを避けましょう。 - 場所:日陰で遊ばせるか、日なたでもひさしや屋根、パラソルの下で遊ばせましょう。
- 帽子や衣類:つばの広い帽子をかぶらせ、肌の露出が少ない服、繊維が詰まっている服、紫外線を反射しやすい白や淡色の服を選びましょう。紫外線防止効果のある繊維製の衣類もオススメです。
- 日焼け止め:赤ちゃん用や子供用の日焼け止めを使用します。低刺激性の製品を選び、防御指数(SPF・PA)は、日常生活ではSPF15~20、PA++、海や山での活動ではSPF20~40、PA++~+++を目安にしてください。ウォータープルーフ(汗や水に強い)製品を選べば、より効果的です。日焼け止めは十分な量を使ってしっかり塗り、使用後は石鹸などできちんと洗い落とすことが重要です。
虫さされ・虫による皮膚炎
夏になると、蚊やブヨといった吸血性の虫たちが活発になります。その他にも、アブやノミ、トコジラミ、ダニなども人間を刺す虫として知られています。さらに、「刺す虫」の代表としてハチ、「咬む虫」ではクモやムカデ、そして皮膚を触れるだけで皮膚炎を引き起こす有毒ケムシなどもあります。
これらの虫に刺されると、かゆみ、痛み、赤みなどが出ますが、その程度は人により異なります。一部の子供は少しの赤みだけで済むこともあれば、刺された部位が大きく腫れ上がり、水ぶくれができたり、腫れが引いた後に皮膚が黒ずんで跡が残ることもあります。
虫刺されの治療としては、かゆみがある場合にはステロイドの外用薬が使用されます。また、炎症が強い場合には抗ヒスタミン薬やステロイドの内服薬を一緒に使うこともあります。
虫から身を守る方法として、虫除け剤(忌避剤)が有効です。主に使われる成分としてディートとイカリジンがあり、これらはともに虫を寄せ付けない効果があります。しかし、効果を十分に発揮させるためには、肌にしっかりと均一に塗ることが大切です。イカリジン15%の製剤を使用すると6~8時間その効果が持続します。
なお、イカリジンには小児に対する使用制限はありません。ディートが主成分の虫よけ製品は、6ヵ月未満のあかちゃんには使用できず、年齢に応じて使用回数の制限があるので注意が必要です
イチゴ状血管腫
イチゴ状血管腫とは、赤ちゃんの皮膚によく現れる小さな「赤あざ」の一種で、これは体内の血管がちょっと不規則に増えた結果、できてしまうものです。その名前の通り、皮膚の上にできたこれらの血管腫は、イチゴのように見えます。
赤ちゃんが生まれたときには、このイチゴ状血管腫はあまり目立ちませんが、生後数週間すると、皮膚が少し盛り上がり、明るい赤色の丸いまたは楕円形のあざとして現れます。
大抵の場合、このイチゴ状血管腫は自分で治るもので、赤ちゃんが1歳になるころから少しずつ小さくなっていき、5歳から7歳の間には、ほとんどの場合、ほぼ完全に消えます。ただし、血管腫が治った後でも、皮膚がちょっとたるんだり、色が変わったりする「あと」が残ることがあります。
経過を観察しつつ自然に消えるのを待つか、あるいは治療をするのかを利点と欠点とを考えて選びます。
でも、赤ちゃんの耳や鼻、目や口、首など、大事なところにできてしまった場合や、治った後の見た目が心配な場合には、ちゃんとした治療が必要になることもあります。
治療法としては、シロップの形で与える薬や、手術、レーザー照射などが考えられます。