急性中耳炎
「急性中耳炎」とは、子どもの耳の中、具体的には鼓膜の奥の部分である中耳に、細菌やウイルスが侵入して炎症を引き起こす病気です。この病気は、生後6か月から2歳頃の子供たちによく見られ、2歳を過ぎると少しずつ罹りにくくなります。小学校に入るまでに60~70%の子供たちが少なくとも一度は急性中耳炎に罹ると言われています。
急性中耳炎は風邪が引き金となって発症することが多いです。症状としては、耳痛や発熱、耳からの分泌物(耳垂れ)などが見られます。赤ちゃんや幼児では、不機嫌になったり、耳を触ったり、突然泣き始めたり、泣き止まなかったり、ミルクを飲まなかったりといった普段と違う行動が見られることがあります。これらの行動は、中耳炎が原因である可能性があります。
治療方法は、鼓膜の状態を医師が観察し、症状の重さに基づいて決定されます。抗菌薬や鼓膜切開といった治療が必ず必要というわけではありませんが、何よりも大切なのは、定期的に鼓膜を観察し、処方された薬を途中で止めないことです。
子供の中耳炎は風邪が原因となることが多いため、風邪の一般的な症状と混同されることがあります。そのため、お子さんの行動が普段と違うと感じたら、受診をしましょう。ただし、中耳炎が慢性化や重症化している場合は、耳鼻科の専門的な治療が必要となるため、そのような時は耳鼻科の受診が必要になることもあります。
鼻血
子どもは、大人に比べて鼻の粘膜が敏感であるため、ちょっとしたのぼせや興奮、血行の良くなる状況で鼻血が出やすくなります。特に朝、目覚めの時間に鼻血が出ることが多いのは、無意識に鼻がムズムズするのをこすってしまうからです。お子様が頻繁に鼻血を出すと、「もしかして何か病気?」と心配になる親御さんも多いでしょう。しかし、鼻血の大部分は、「鼻ほじり」によるものです。
鼻血が出た場合の応急処置は、まずは冷静になり、小鼻の両側を摘んで、軽くうつむくようにさせます。これだけで10分程度で止まることがほとんどです。ティッシュを詰めると抜いた時に傷が擦れてまた血が出てしまったり、上を向かせると血がノドへ垂れ落ちてむせる事があるのでやめましょう。
「よく鼻血を出す」お子さんは、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、風邪による急性鼻炎などを患っている可能性があります。これらが原因で鼻が炎症を起こし、ムズムズとした感じがするために鼻を触ってしまうことが多いのです。そして、鼻血が止まった後にできる「かさぶた」が気になり、再び鼻を触ってしまうという悪循環になってしまうことも。鼻の病気の治療を行い、鼻血が出やすい状態を改善することが重要です。
副鼻腔炎
副鼻腔とは、顔や目の周りの骨に存在する空洞の部分のことを指します。鼻の穴は丸く洞窟のように見えますが、その奥は広い空間、まるで鍾乳洞のように広がっています。私たちが呼吸をする際、空気が鼻から入ってそのまま肺に流れ込むと、空気が乾燥して肺が傷ついてしまう可能性があります。これを防ぐために、副鼻腔という鍾乳洞で空気が加湿され、その後肺に入るようになっています。
この副鼻腔にウイルスや細菌が感染すると、副鼻腔炎という病気が起こります。症状としては、鼻がつまる感じ、色のついた粘り気のある鼻水が多量に出ることなどがあります。さらに、匂いが分かりにくくなったり、鼻水が喉に流れ込んで咳を引き起こすこともあります。頭がぼーっとして集中力がなくなることや、頭痛、発熱を伴うこともあります。
副鼻腔炎の治療は、副鼻腔の菌を減らし、炎症を鎮めることが重要です。また、副鼻腔内に溜まった膿を排出することも大切です。適切な治療を行うと、急性副鼻腔炎は1~2週間でよくなることが多いです。しかし、治療を放置すると慢性副鼻腔炎に進行する可能性があり、治療期間が長くなるため、早期の対応が重要となります。
扁桃・アデノイド肥大
扁桃とアデノイドはリンパ組織が集まった部分で、人間の免疫系における「前線基地」のような役割を果たしています。つまり、体内に侵入しようとする病原体(細菌やウイルスなど)を捕まえて、それ以上体の奥に進入させないようにする働きをしています。
これらの組織は年齢とともに大きさが変化します。扁桃は3歳頃から大きくなり始め、7歳頃に最大となり、そして10歳頃にはまた小さくなります。一方、アデノイドは2歳頃から大きくなり、6歳頃に最大となり、その後、10歳頃までに自然に小さくなっていきます。
扁桃やアデノイドが肥大すると、様々な症状を引き起こすことがあります。扁桃の肥大は呼吸障害や飲み込み障害(食事が飲み込みにくい、食事に時間がかかるなど)、睡眠障害(いびきや睡眠時無呼吸、寝起きが悪い、日中眠そうになるなど)を引き起こす可能性があります。特に重篤な症状がない場合は、経過観察を行いますが、肥大による症状の程度が強い場合は、手術(扁桃摘出術)を行うこともあります。
一方、アデノイドの肥大は、急性中耳炎の繰り返し、滲出性中耳炎、鼻閉などを引き起こすことがあります。これらの症状が無い場合は、経過観察を行います。しかし、肥大により呼吸障害や睡眠障害が重篤化すると、手術を必要とすることもあります。
先天性耳瘻孔(じろうこう)
先天性耳瘻孔とは、生まれつき耳の周囲に小さな穴が開いている状態を指します。
これは、胎児のときに耳が形成される過程で通常閉じるべき部分が閉じずに残ってしまったもので、これが小さな穴となります。
この穴からは、ときおり、チーズ様の臭い分泌物が出ることがあります。しかし、多くの場合、穴は浅く、感染症を起こすことなく無症状で経過します。そのため、特に治療の必要はありません。しかしながら、この小さな穴から細菌が入り込み、感染を引き起こすこともあります。一度感染が起こると、腫れた部分を切開して膿を出す治療や、抗生物質の内服などが必要になることがあります。感染を繰り返す場合は、この穴を手術で取り除く場合もあります。
先天性鼻涙管閉鎖
目と鼻は、鼻涙管という管でつながっています。ドライアイにならないように常に涙が流れ、瞳を潤し、その管を通って鼻に流れ、最終的には飲み込んでいます。泣いたときに鼻から出ているのは実は涙なのです。この鼻涙管が詰まったり、狭い場合、お子さんは涙がよく出たり、目ヤニが多くなったりします。大体の場合、「生まれてからずっと涙が多い」「目ヤニがよく出る」「朝、目を覚ましたら目ヤニでいっぱい」などの症状で、小児科や眼科に行くことになります。
ほとんどの場合、1歳までに鼻涙管が通り自然に良くなります。その過程を助けるために、目と鼻の間を親指や人差し指でやさしく押してマッサージすることを1日数回試してみてください。ただ、赤ちゃんが大きくなるにつれて、この問題が自然に治る可能性は低くなります。1歳を過ぎても涙や目ヤニの問題が改善しない場合は、眼科の先生に見てもらうことをお勧めします。
耳垢
耳垢は、耳の中の古い皮膚や分泌物が集まったもので、実は耳の内部を守る大切な役割を果たしています。私たちが口を動かしたり、身体を動かしたりすることで、自然と耳垢は動いて耳から出てきます。特に乾いている耳垢は、基本的にはそのままで問題ありません。逆に、無理に耳掃除をすると、耳垢を深く押し込んでしまったり、耳のトンネルである外耳道にトラブル(例えば、外耳道炎)を起こす原因にもなります。
ご自宅で耳掃除をするときには、耳の入り口から見える範囲だけ(大体、耳の穴の入口から1cm位まで)を綿棒でやさしく拭き取ることをお勧めします。これを月に1~2回行えば十分です。お風呂上がりの耳垢は湿って柔らかいので、掃除しやすいです。ただし、竹や金属の硬い耳かきは使わないようにしましょう。これらは簡単に傷をつける原因となり、外耳道炎や外耳湿疹を引き起こしやすいです。また、お子さんが突然動いた時に鼓膜を破る危険もありますので、ご注意ください。
でも、もし耳が詰まって聞こえにくい、あるいは鼓膜(耳の奥)を見たいときに耳垢が見えなくさせてしまうときは、耳垢を取り除く必要があります。そのときは、病院で耳垢を取り除いてもらうこともあります。